忍者ブログ

長良の落陽。

産業機械におけるシャフトカップリングの用途

産業機械では、モータや減速機の回転を各種機構へ確実に伝えるために「シャフトカップリング」が広く使われています。単に軸同士をつなぐだけでなく、芯ずれの吸収、振動の低減、過負荷保護など、装置の安定稼働を支える重要部品です。適切なカップリングを選定できれば、部品寿命の延長や保全コストの削減にもつながります。本稿では、産業機械におけるシャフトカップリングの代表的な用途を整理し、それぞれの役割を解説します。
1. 動力伝達(モータ―減速機―負荷の接続)
最も基本的な用途は、回転動力を確実に伝えることです。
モータ軸と減速機入力軸、減速機出力軸と搬送ローラ軸など、回転系の接続点で用いられます。カップリングを介することで、軸同士を一体化し、トルクを安定して伝達できます。装置構成がモジュール化され、組立・交換がしやすくなる点も現場で評価されます。
2. 芯ずれ(ミスアライメント)吸収
現実の機械では、軸芯を完全に一致させるのは難しく、組立誤差や熱変形、ベースのたわみで芯ずれが発生します。
カップリングは、この芯ずれ(平行ずれ・角度ずれ・軸方向変位)を許容し、ベアリングや軸受への過大な負荷を抑える役割を担います。特に長尺シャフトや温度変化の大きい設備では、芯ずれ吸収性能が装置寿命に直結します。
3. 振動・衝撃の緩和(トルク変動の吸収)
プレス機、破砕機、ポンプ、コンプレッサなどでは、負荷の変動や衝撃がトルクとして入力側に戻り、振動や騒音、部品疲労の原因になります。
弾性体(ゴム等)を用いたカップリングやねじれ柔軟性のある構造を選ぶことで、トルクの脈動を吸収し、振動を低減できます。結果として、装置全体の静粛性や耐久性が向上し、保全頻度も減らしやすくなります。
4. 高精度位置決め機構での使用(バックラッシ低減)
サーボモータ+ボールねじ、インデックステーブル、ロボット関節など、位置決め精度が要求される機構にもカップリングが使われます。
この場合は、ねじれ剛性が高く、バックラッシが小さい(あるいはゼロバックラッシ)タイプが選定されます。回転指令を遅れなく伝えることで、制御性能を引き出し、繰り返し精度や応答性を確保できます。
5. 過負荷保護(トルクリミッタ・安全機構)
異物噛み込みや機構固着などで急激にトルクが上昇すると、モータや減速機、シャフトが破損する恐れがあります。
過負荷保護機能を持つカップリング(安全カップリング、トルクリミッタ付カップリング)を用いることで、一定トルクを超えた際に滑り・解除して、上流側の高価な部品を守れます。ライン停止の損失が大きい設備ほど、保護機構の価値が高まります。
6. メンテナンス性向上(分解・交換の容易さ)
設備保全の観点でも、カップリングは重要です。
分割式やクランプ式など、軸を抜かずに交換できる構造を選ぶと、停止時間を短縮できます。摩耗部品があるタイプでは、定期交換が前提になるため、交換作業のしやすさが稼働率に直結します。
7. 特殊環境・特殊条件での用途(温度・腐食・クリーン)
食品・医薬・化学、屋外設備などでは、耐食性、耐薬品性、耐熱性、清掃性が求められます。
ステンレス材や表面処理品、潤滑レス構造などのカップリングを選ぶことで、環境条件に適合できます。また、粉じんを嫌うクリーン環境では、摩耗粉の少ない構造を選定することがポイントになります。
まとめ
産業機械におけるシャフトカップリングの用途は、動力伝達だけでなく、芯ずれ吸収、振動・衝撃緩和、高精度位置決め、過負荷保護、メンテナンス性向上、特殊環境対応など多岐にわたります。適切な選定は装置の寿命や精度、稼働率を左右するため、トルク条件、回転数、許容ミスアライメント、求める剛性や保護機能、使用環境を整理した上で選ぶことが重要です。カップリングを“ただの接続部品”ではなく、機械の信頼性を支える要素として捉えることが、トラブル低減への近道になります。
PR

シャフトカップリングの仕組みとトルク伝達の原理

シャフトカップリングは、モータ軸と負荷側の軸をつなぎ、回転力(トルク)を確実に伝えるための機械要素です。装置の中では小さな部品ですが、芯ずれ吸収や振動低減、位置決め精度の確保など、駆動性能に与える影響は非常に大きくなります。トラブルの多くは「トルクが伝わっているつもり」で設計してしまうことから始まるため、仕組みと原理を理解して選定・取付することが重要です。
仕組み①:2本の軸を“結合”して回転を伝える部品
基本構造
一般的には「ハブ(軸に固定する部品)+結合部(弾性体や金属ばねなど)」で構成されます。
役割
モータの回転を負荷へ伝達すると同時に、取り付け誤差や運転中の軸変位を許容し、軸受や機械への負担を減らします。



「写真の由来:5mm-6.35mm リジッドカップリング 25x30mm CNCステッピング モータシャフトカップリング
トルク伝達の原理①:摩擦締結(クランプ式・焼ばめ等)
どう伝えるか
ハブが軸を強く締め付け、接触面の摩擦力でトルクを伝えます。
特徴
バックラッシが出にくく、芯出し精度が取りやすい一方、締付力不足や組付け不良があると空転(スリップ)しやすくなります。
ポイント
規定トルクでの締付、軸径公差、表面状態(油分除去)などが性能を左右します。
トルク伝達の原理②:形状結合(キー・スプライン・ピン)
どう伝えるか
キー溝やスプラインの噛み合いで、機械的に回転力を受け止めて伝達します。
特徴
大トルクに対応しやすく、締付力に依存しにくい反面、ガタ(バックラッシ)や応力集中が発生しやすい場合があります。
ポイント
高精度用途ではガタ対策(予圧設計や別方式の検討)が必要になります。
トルク伝達の原理③:弾性体・ばね要素による“ねじり伝達”
どう伝えるか
ゴム(エラストマー)や金属ベローズ、ディスク(板ばね)などがわずかにねじれながらトルクを伝えます。
特徴
芯ずれ吸収や振動低減に効果があり、装置の騒音低減や寿命向上に寄与します。
ポイント
ねじり剛性が低すぎると応答遅れや共振を招き、高すぎると芯ずれ由来の振動が伝わりやすくなります。
仕組み②:芯ずれ(ミスアライメント)を許容する設計
許容するズレの種類
偏心ずれ(平行ずれ)、角度ずれ、軸方向ずれの3つが代表的です。
意味
実機では完全な同心・同軸は難しいため、カップリングがズレを吸収することで軸受負荷や振動を抑えます。
注意点
許容値を超えると、発熱・摩耗・破損の原因になります。機械側の芯出し精度も重要です。
仕組み③:代表的なカップリング構造と伝達の違い
ジョー(エラストマー)
ゴム部品が介在し、衝撃吸収と静音化に強い。一般機械で使いやすい。
オルダム
中間ディスクがスライドし、偏心ずれの吸収が得意。摺動摩耗の管理が必要。
ベローズ
金属蛇腹の弾性で高剛性・低バックラッシを実現しやすい。芯出しが不十分だと負担が増えやすい。
ディスク
板ばねで角度ずれに対応し、高トルク・高応答に向く。サーボ用途で多い。
性能に直結する要素:バックラッシ・剛性・バランス
バックラッシ
ガタがあると位置決め精度に影響します。精密用途では低バックラッシ構造を選びます。
ねじり剛性
高いほど応答が良い一方、振動が伝わりやすくなることがあります。用途に合うバランスが必要です。
動バランス
高速回転ではわずかな偏りが振動源になります。許容回転数とバランス品質を確認します。
まとめ
シャフトカップリングは、ハブと結合部で2本の軸をつなぎ、摩擦締結・形状結合・弾性要素のねじり伝達といった仕組みでトルクを伝えます。同時に芯ずれを許容して軸受負荷や振動を抑える役割も担い、構造によってバックラッシや剛性、減衰特性が大きく変わります。目的の精度・応答性・静音性に合わせて方式を選び、許容芯ずれ内で正しく取り付けることが、安定したトルク伝達と長寿命化の鍵になります。

ユニポーラステッピングモータはどんな装置に向いている?

ステッピングモータは、一定角度ずつ回転して位置決めがしやすいことから、多くの機器で使われています。その中でもユニポーラステッピングモータは、巻線の構造を活かして比較的シンプルな駆動回路で動かしやすい点が特徴です。一方で、トルク性能や効率の面では他方式と比較検討が必要な場合もあります。この記事では、ユニポーラステッピングモータが得意とする用途や、向いている装置の特徴を分かりやすく整理します。
1. 低〜中トルクでシンプルに動かしたい装置
ユニポーラステッピングモータは、駆動回路を簡素に設計しやすい傾向があります。
そのため、過度に大きなトルクを必要としない装置で「制御を分かりやすく、コストも抑えたい」という場面に向きます。簡易な位置決めや一定速度での回転が中心の用途で採用されやすいです。
2. 事務機器・小型機器の紙送り/搬送機構
紙送りや軽負荷の搬送機構は、一定ピッチで安定して動かすことが重要です。
ユニポーラステッピングモータは、回転量を管理しやすく、繰り返し動作にも適しているため、プリンタやラベル機器などの搬送系で使われることがあります。機構が軽いほどメリットを活かしやすいです。
3. 小型バルブ・ダンパーなどの開閉制御
開閉角度を決めて動かす用途では、ステッピングモータの位置決め性が活きます。
ユニポーラステッピングモータは、比較的シンプルな制御で「所定角度まで動かして止める」動作に適しており、空調系のダンパー、流量調整バルブなどの制御にも向きます。
4. 表示機器・計器の指針/小型アクチュエータ
小型の指針を一定角度で動かす、または小さな機構を繰り返し駆動する用途にも適しています。
例えば表示パネルの機構部、簡易ゲージの指針駆動など、精密サーボほどの性能が不要で、一定の再現性が必要な装置で使いやすいです。
5. 教育・試作・評価装置など「扱いやすさ」重視の場面
ユニポーラ方式は理解しやすく、試作段階で動作確認を行いたい場合に採用されることがあります。
簡単な制御で動作を再現しやすいため、教育用途や評価治具、簡易自動化の試作機など、スピード重視で立ち上げたい装置で選ばれることがあります。
6. 注意点:高トルク・高効率が必要なら方式比較が重要
ユニポーラステッピングモータは用途によっては十分ですが、より高いトルクや効率が必要な場合は注意が必要です。
同サイズの条件ではバイポーラ方式が有利になるケースもあるため、負荷条件、速度域、発熱、電源制約などを整理したうえで、方式選定を行うことが重要です。
まとめ
ユニポーラステッピングモータは、比較的シンプルな制御で位置決めや繰り返し動作を行いたい装置に向いています。紙送り・軽負荷搬送、バルブやダンパーの開閉、指針駆動、小型アクチュエータ、教育・試作装置などで活用されやすいのが特徴です。一方で、高トルク・高効率が求められる用途では他方式との比較が欠かせません。装置の要求性能を整理し、最適な方式と仕様を選ぶことが成功のポイントです。

安定動作のためのブラシレスDCモータ使用上の注意

ブラシレスDCモータ(BLDCモータ)は高効率・長寿命・低メンテナンスという利点から、産業機器から医療機器まで幅広く採用されています。しかし、ブラシがない分だけ制御はドライバ(インバータ)に依存し、電源条件や配線、設定、熱・負荷条件が合わないと振動や失速、過熱などのトラブルが起こります。安定動作を実現するには、機械・電気・制御をセットで整えることが重要です。
1) 定格(電圧・電流・回転数・トルク)を守る
最優先は仕様範囲内で使うことです。
定格超過は過熱や減磁、ドライバ破損の原因になります。負荷変動も見込んで余裕を持った選定を行います。
2) ドライバ設定(極数・センサ種類・制御モード)を一致させる
BLDCは設定ミスで動かない・振動することが起こりやすいです。
ホールセンサ有無、エンコーダ仕様、極対数、回転方向、速度・トルク制御モードを確認し、モータ仕様と完全に合わせます。
3) 起動・低速域は特に注意(失速・振動)
低速・高負荷での起動はトラブルが出やすい領域です。
ソフトスタート、適切な加減速、必要ならセンサ付き制御を採用し、起動トルク不足やハンチングを避けます。
4) 電源品質(電圧降下・リップル・ノイズ)を管理する
電源が不安定だと制御が乱れます。
電源容量不足や長い配線による電圧降下、リップル増大は失速や異常停止の原因になります。配線太さ・電源選定・コンデンサ配置を見直します。
5) 配線・接地・EMI対策を徹底する
スイッチング制御のため、ノイズ対策が重要です。
動力線と信号線の分離、シールド線の適切な接地、フェライトやフィルタの活用で誤動作を防ぎます。
6) 放熱と温度管理(熱が寿命を決める)
高効率でも発熱はゼロではありません。
取り付け面で放熱できる構造にし、通風・ヒートシンクを確保します。温度センサや保護機能を活用し、連続運転での温度上昇を管理します。
7) 機械負荷(慣性・摩擦・芯ズレ)を見直す
モータが正常でも機械側が原因で不安定になります。
過大慣性は加減速時に過電流を招きます。芯ズレやベアリング不良、ベルト張り過ぎなどの抵抗増も振動・過熱の原因です。
8) 保護機能・エラーの扱いをルール化する
安全に止める仕組みは“安定運用”の一部です。
過電流・過熱・過電圧・欠相などのアラーム条件と復帰手順を定め、ログやエラーコードを使って再発防止につなげます。
まとめ
ブラシレスDCモータを安定動作させるには、①定格内運用と余裕選定、②ドライバ設定の一致、③起動・低速域の制御、④電源品質の確保、⑤配線・接地・EMI対策、⑥放熱と温度管理、⑦機械負荷の適正化、⑧保護機能の運用ルール化が重要です。モータ単体ではなく「ドライバ+電源+機械」を一体で最適化することで、BLDCモータの性能と信頼性を最大限に引き出せます。

PM型ステッピングモータが脱調する原因と対策

PM型ステッピングモータ(永久磁石型)は、構造が比較的シンプルで低速域のトルクが得やすく、位置決め用途で広く使われています。しかし、負荷変動や加減速条件が厳しいと、指令したステップに追従できず「脱調」が発生し、位置ズレや停止トラブルにつながります。脱調は“突然起きる”ように見えて、原因を分解すると対策が立てやすい現象です。本稿では、主な原因と実務的な対処法を整理します。
1) 負荷トルクがモータトルクを上回っている
最も基本的な原因は、実際に必要なトルクがモータの発生トルク(回転中トルク)を超えることです。
余裕トルクが小さいと、わずかな負荷増でも脱調します。対策は、トルク曲線に対して十分なマージンを確保し、必要ならモータサイズ・ギア比を見直します。
2) 加速・減速が急すぎる(慣性負荷の影響)
負荷慣性が大きいのに加減速時間が短いと、加速に必要なトルクが増え、脱調しやすくなります。
台形加速やS字加速で立ち上げを緩やかにし、最高速に到達するまでの時間を延ばすと安定します。負荷慣性の低減(軽量化)も有効です。
3) 高速域でのトルク低下(電流立ち上がり不足)
回転数が上がるほどコイル電流が十分に立ち上がらず、トルクが落ちやすくなります。
電源電圧の見直し、定電流チョッパドライバの採用、配線抵抗の低減などで高速域トルクを改善できます。


「写真の由来:Oukeda PM42 永久磁石ステッピングモーター OK42PM22-0186A-C1 7.5度 4.90Ncm 12V 6線

4) 共振(振動)による実効トルクの低下
ステッピングモータは特定回転域で共振しやすく、振動が増えるとトルクが有効に使えず脱調に至ります。
マイクロステップ化、共振帯を避けた運転点設定、機械剛性の向上、ダンパ追加などが典型的な対策です。
5) 電流設定ミス・電源不足
ドライバの電流設定が低い、または電源容量不足で電圧降下が起きると、必要トルクが出ません。
定格電流に合わせた設定、電源容量の確保、ピーク電流時の電圧降下チェック(配線も含む)を行います。
6) 取付・伝達系の問題(カップリング、ベルト張力、芯ズレ)
軸芯ズレやカップリングの不適合、過大なベルト張力は、余計な負荷や振動を生みます。
芯出し精度の改善、適切なカップリング選定、ベルト張力の最適化、軸受状態の点検で脱調要因を減らせます。
7) 指令パルス品質の問題(ノイズ・欠落・ジッタ)
パルスが欠落したりタイミングが乱れると、モータが意図しない挙動になり脱調に見えることがあります。
シールドやツイスト配線、適切な接地、配線分離(動力と信号)、入力フィルタ設定などで信号品質を確保します。
8) 温度上昇によるトルク低下・保護動作
長時間運転でモータやドライバが熱くなると、抵抗増加で電流が下がったり、保護で出力が制限されます。
放熱(取付面・通風)を改善し、連続定格内で運用します。必要に応じて電流低減やデューティの見直しも検討します。
まとめ
PM型ステッピングモータの脱調は、①トルク不足(負荷過大・高速トルク低下)、②加減速条件(慣性負荷)、③共振、④電源・設定不備、⑤機械伝達系や信号品質、⑥熱の問題に大別できます。対策の基本は「トルク曲線で余裕を確保し、加減速を最適化し、共振とノイズと熱を潰す」ことです。現象が出たら、負荷→加減速→電源/電流→機械→信号→温度の順で切り分けると、効率よく原因に到達できます。

プロフィール

HN:
No Name Ninja
性別:
非公開

P R