ブラシレスモータの基本の制御回路としては、 前17章で「専用IC」で説明した「標準コア」回路構成で適応できますが、 全ての機能をハード回路部品で構成するため、 制御特性を司るパラメータやフィルタ定数などの設定に自由度が少なく 要求仕様のカバー範囲は狭くある程度限定されてしまいます。
そこで本章では、より高機能、高性能な要求仕様をより広く適用可能な 「標準コア」制御回路構成例として 汎用マイコンを使用した制御回路構築のスタイルを紹介したいと思います。
マイコンを使用する「標準コア」制御回路
下記に基本制御回路を示します。 「標準コア」となる制御回路構成は、前17章で示したものと変わりません。 但し、※小信号回路部を汎用マイコン(MCU)で構成します。
Pre Driver部とPower Driver部は、専用ICか、ディスクリートで構成します。
マイコンを使用するメリット
●マイコンを使用する最大のメリットは、
ハード回路で構成される専用ICは、幅広い仕様条件に適合できませんが、 各機能回路をマイコンにデジタル回路化してインプリメントすることで 実現可能です。
●制御パラメータの調整範囲が広がり適応モータメカが多くなります。
各制御回路ブロックで個別に必要になる 多数ある複雑な制御係数、変数、定数、制御関数、フィルタ定数なども ソフトコード化、データテーブル化で対応可能になります。
●冗長性に配慮し、高速で性能の高いマイコンを選択することで
専用ICでは、実現不可能な高機能、性能仕様の実現も可能になります。
マイコンを使用するデメリット
●設計技術者に求められる技術スキルとして
ハード回路のみで制御回路を設計構築する場合の技術、手法にはない ソフトウエア技術、デジタル制御技術の習熟が必要になります。
●※マイコン開発環境も必要なので、それらの購入資金も必要です。
(※IDE(コンパイラ、デバッガ)、ICEエミュレータなど)
●マイコン機能(回路)は、ソフトウエアで構築しますが、
このソフトで製作する回路部は、テンプレート的なものは殆ど無く 新たにカスタム回路として開発する必要があり、 かなりの開発の手間、時間を要します。
マイコンを使用する上での注意点
マイコンはとても便利な部品ですが、 全ての機能をカバーし実現できる訳ではありません。
特にリアルタイム性が求められる機能では、 高速応答性が高いハード部品の方が有利です。 マイコンは演算器であり、如何に高性能なマイコンを使用しても 演算処理の時間分のタイムラグ、遅延は存在します。
単純構成で多様性がない専用ハード部品の方が、 適しているシーンは必ず出てきます。
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