3Dプリンターの素材と言えば、ABS樹脂とPLA樹脂が最も一般的でしたが、耐候性の強いASA樹脂、耐熱・耐薬品性の強いPP樹脂、エンジニアリングプラスチックのPC樹脂やナイロン樹脂、そのほか、アクリル樹脂、PETG、熱可塑性ポリウレタン、金属なども3Dプリンターで造形できるようになっています。
ここからは、主な3Dプリンター用素材をご紹介していきましょう。
パウダーベッド方式
ABS樹脂とは、アクリロニトリル(A)、ブタジエン(B)、スチレン(S)の三つの有機化合物を結合した熱可塑性樹脂です。最も汎用性の高いプラスチックで、さまざまな製品に使用されています。
ABS樹脂のメリットは、耐衝撃性や耐熱性、耐薬品性に優れていること。また塗装や研磨といった、造形後の加工がしやすいです。
デメリットは、耐候性に弱く、太陽光が当たるところで長時間使用すると強度が低下したり、湿気で反り返ってしまったりすること。安定性が低く冷やすと収縮して反り返りやすいため、特に大きい造形物は造形不良が起こりやすくなります。
PLA樹脂
PLA樹脂は、トウモロコシやジャガイモなどのデンプンを使用した植物由来の熱可塑性樹脂。石油由来のABS樹脂の代替素材として開発された、エコなプラスチックです。
PLA樹脂のメリットは、ABS樹脂よりも安定性が高く、冷やしても収縮や反り返りが起こりにくいこと。大きい造形物の製作にも向いています。
また樹脂が溶けた嫌な臭いがしないのも、嬉しいポイントです。
デメリットは、表面は硬くて丈夫なのですが、耐衝撃性や耐熱性が弱いこと。塗装や研磨などの、造形後の加工が難しいです。
ASA樹脂
ASA樹脂は、ABS樹脂のブタジエンを、アクリレートに置き換えた熱可塑性樹脂です。基本的に、ABS樹脂と特性は同じなのですが、耐候性が高く、屋外で使用しても劣化しにくいというメリットがあります。
PP(ポリプロピレン)樹脂
PP樹脂は、熱可塑性樹脂で、よく耐熱容器などに使用されているプラスチックです。
PP樹脂のメリットは、耐熱性や耐衝撃性、耐薬品性に優れていて、さらに軽いこと。
冷やした時の収縮率が高いため、熱溶解積層方式(FDM方式)での造形は難しいと言われており、主に粉末焼結方式(SLS方式)で使用されてきましたが、最近は、熱溶解積層方式(FDM方式)向けのPP樹脂フィラメントも登場しています。
PET(ポリエチレン・テレフタレート)/PETG
PETは、ペットボトルの素材として使用されている熱可塑性樹脂です。
PETのメリットは、強度や耐久性、耐熱性に優れていること。透明性のある素材ですが、3Dプリンターで造形するとペットボトルほど透明なものは出来上がりませんので注意してください。
PETGは、PETの強化素材で、PET以上の透明性と、ABS樹脂と同じレベルの強度や耐久性、耐熱性、さらにPLA樹脂レベルの安定性を持つ優れた素材です。
エポキシ系樹脂
エポキシ系樹脂は、熱を加えると硬化する、熱硬化性の液体樹脂です。
エポキシ系樹脂のメリットは、安定性と耐薬品性に優れていること。
エポキシ系樹脂で一般的な素材は、ABSライクとPPライク。どちらも紫外線で硬化する液体樹脂で、光造形方式(SLA方式/DLP方式)で使用されます。
それぞれ、ABS樹脂とPP樹脂に似た性質を持っていますが、ABSライクは、ABS樹脂よりもやや強度が劣るため、ABS樹脂の代替としての使用にはあまり向きません。
アクリル樹脂
アクリル樹脂は、透明度の高い熱可塑性樹脂です。
アクリル樹脂のメリットは、耐衝撃性と耐候性に優れていること。そのため建材や車両によく使用されています。
デメリットは、PET/PETGと同じように、3Dプリンターでは高い透明性を再現できないこと。また、表面に傷がつきやすいです。
PC(ポリカーボネート)樹脂
PC樹脂は、熱可塑性樹脂で、特に強度や耐熱性などに優れ、主に工業製品に使用される「エンジニアリングプラスチック」です。
PC樹脂のメリットは、プラスチック素材の中でも最高レベルの強度。また耐熱性や耐衝撃性、耐候性も高く、さらに軽いことです。
屋外での使用もでき、また研磨すると美しい光沢を放って高級に見えます。
デメリットは、高温多湿の環境に弱いこと。対応機種があまり多くないことも挙げられます。
ナイロン樹脂(ポリアミド樹脂)
ナイロン樹脂もエンジニアリングプラスチックです。アパレル製品や自動車のパーツなどに使用されています。
ナイロン樹脂のメリットは、耐衝撃性や耐熱性、耐薬品性に優れた柔軟性のある素材であること。
デメリットは、粉末焼結方式(SLS方式)では一般的に使用される素材ですが、熱溶解積層方式(FDM方式)での造形は難しく、対応機種が限られていること。
またデメリットではありませんが、素材の特徴として、表面が少しざらついています。
熱可塑性ポリウレタン
熱可塑性ポリウレタンとは、ゴムやエラストマーのことです。食品業界や医療業界でよく使われています。
熱可塑性ポリウレタンのメリットは、耐熱性、柔軟性に優れていること。また厚みを調整することによって、硬さを調整できるほか、着色もできます。
デメリットは、安定性が低く、対応機種が限られていることです。
石膏
石膏は、バインダージェット方式でのみ使用できる粉末材料です。主に模型やフィギュアなどの、デザイン確認に使用されています。
石膏のメリットは、材料費が安く、造形にかかる時間が短いこと。また着色がしやすいです。
デメリットは、耐久性が低く、とても脆いこと。また粉末素材のため、造形後の粉末除去、健康被害や事故を防ぐための粉じん対策が必要で、意外と手間がかかることも挙げられます。
金属
金属3Dプリンターにはいくつかタイプがあり、機種によって、鉄、銅、ニッケル、チタン、シルバー、ステンレス、アルミニウムなど、さまざまな金属素材を使用することができます。
金属素材は、主に最終製品の製造に使用され、自動車や航空機、医療パーツなど、さまざまな用途で使用されています。
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