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長良の落陽。

高速回転に最適なシャフトカップリングの選定基準とは?

モータやスピンドル、ポンプなどの高速回転軸を接続する際、シャフトカップリングの選定は非常に重要です。
カップリングの選び方を誤ると、
振動増加
異音・共振
軸受やシールの早期損傷
カップリング本体の破損
といったトラブルにつながり、装置全体の寿命低下や停止リスクを招きます。
この記事では、高速回転に適したシャフトカップリングを選定するための主な基準を、ポイントごとにわかりやすく解説します。
1. 高速回転で特に重要になる「バランス」と「慣性モーメント」
● 動バランス性能(バランシング)
高速回転になるほど、カップリングのわずかな偏心や質量偏りが大きな遠心力となり、
振動・騒音・軸受負荷の増大につながります。
チェックしたいポイント:
メーカーが保証する許容回転数(max rpm)
バランスグレード(ISO G2.5 など)に対応しているか
高速用として設計された専用シリーズかどうか
高速用途では、「高速対応」と明記されたカップリングを選ぶことが基本です。
● 慣性モーメント(回転体の軽さ)
高速応答が必要なサーボ軸やスピンドルでは、
カップリングの慣性モーメントが小さいほど有利です。
軸の立ち上がり・停止が速くなる
サーボチューニングが安定しやすい
モータへの負担(慣性比)が減る
アルミや高強度樹脂を用いた軽量タイプは、高速・高応答の軸に適しています。
2. 許容回転数とトルクの確認
● 許容回転数(Max rpm)
カップリングには必ず「許容回転数」の仕様があります。
高速用途では、実際に使う最大回転数に対して、
1.2~1.5倍以上の余裕を見て選定するのが安全です。
例)
運転条件:6000 min⁻¹ → 仕様上 8000~9000 min⁻¹ 以上のカップリングを選定 など。
● 許容トルク・ピークトルク
高速回転で急加速・急減速を行う軸では、
定常トルクだけでなく**ピークトルク(加減速時)**も考慮します。
定格トルクに対して**安全率(1.5~2倍程度)**を見込む
負荷側の慣性・加速度から必要トルクを計算しておく
トルク余裕が少ないカップリングは、
疲労破壊やスリップ、ゴム・樹脂部の早期劣化につながります。
3. 軸ずれ許容量とそのタイプ
高速回転軸でも、実際には
平行ミスアライメント(平行ずれ)
アンギュラミスアライメント(角度ずれ)
軸方向変位(スラスト方向の伸び縮み)
といった軸ずれが必ず生じます。
● 高速時ほど「過度な軸ずれ」は大敵
軸ずれが大きいと、高速では:
カップリング内部での弾性変形が大きくなり発熱・摩耗が増加
振動が増え、軸受やシールにも悪影響
そのため、
装置側の芯出し精度を高める
カップリングの許容ミスアライメント値以内に収める
ことが重要です。
● 高速用途でよく使われるカップリング例
ディスクカップリング(メタルディスク)
高速・高精度・高剛性
角度・平行ミスアライメントを板バネ変形で吸収
ベローズカップリング
高いねじり剛性と柔軟性
サーボ軸の高速精密位置決めに好適
ゴム継手など柔らかいタイプは、減衰性は高いものの、
超高速用途では遠心力や変形が大きく、条件によっては不利になることがあります。
4. ねじり剛性・バックラッシの有無
● ねじり剛性(Torsional Stiffness)
高速かつ高精度な位置決め軸では、
ねじり剛性の高いカップリングが求められます。
剛性が低い → 軸の「ねじれ」が大きく、指令に対する応答遅れや位置誤差が発生
剛性が高い → サーボ制御の応答が良くなり、振動抑制にもつながる
特にサーボモータ軸・同期制御軸では、
**高ねじり剛性タイプ(メタルディスク・ベローズなど)**がよく選ばれます。
● バックラッシ(がた)の有無
高精度な位置決め
正逆転を頻繁に行う高速サーボ
では、バックラッシゼロ構造のカップリングがほぼ必須です。
歯車式カップリングなど、構造上バックラッシを持つものは、
高速高精度軸には原則不向きです。
5. 材質・構造と環境条件
● 材質選定のポイント
よく使われる材質:
アルミ合金:軽量・加工性良好・中トルク向け
ステンレス・高張力鋼:高強度・耐久性が必要な用途
ベローズ部:ステンレス薄板
スペーサ部:アルミやステンレスなど
高速回転では、
強度と剛性
質量・慣性のバランス
の両面を見ながら、カップリング全体の構造を選ぶことが大切です。
● 使用環境
高温・低温環境
オイルミスト・粉塵・薬品雰囲気
真空・クリーンルーム
など、環境条件によっては、
グリースレス構造
シール構造
表面処理(ニッケルめっき、アルマイトなど)
が求められることがあります。
高速軸では潤滑油飛散や発熱にも注意が必要です。
6. 取り付け方法と芯出し性
● クランプ式 or セットスクリュー式
クランプ式
高速・高精度用途で一般的
軸への傷が少なく、芯出し調整がしやすい
セットスクリュー式(止めネジ)
構造はシンプルだが、高速では偏心・振れが出やすい場合も
高速回転では、クランプ式の高精度タイプを選ぶのが無難です。
● 取り付け誤差を最小に
軸の公差(h7 など)とカップリングの穴公差の適合
軸端面の直角度・振れ
実際の芯出し作業のしやすさ
これらも最終的な回転精度・振動レベルに大きく影響します。
7. 共振・危険速度の確認
高速回転軸では、
系全体(モータ+カップリング+負荷)の固有振動数と運転回転数の関係も重要です。
危険速度付近で運転 → 振動・騒音・破損リスク
カップリングの剛性・質量・長さが、固有振動数に影響
可能であれば、
メーカーの技術資料
振動解析結果
などを参考にして、常用回転数が共振域から十分離れているかを確認すると安心です。
8. まとめ:高速回転用シャフトカップリングの選定基準
高速回転に最適なシャフトカップリングを選ぶ際は、次のポイントを総合的にチェックします。
許容回転数と動バランス性能
高速対応シリーズか、回転数に十分な余裕があるか
トルク容量とピークトルクの安全率
定常+加減速トルクに対して余裕を持った選定
ミスアライメント許容量と軸芯出し性
実際の取付精度に見合った許容値を持つタイプか
ねじり剛性とバックラッシの有無
高精度位置決めには高剛性・ゼロバックラッシタイプ
材質・構造と環境条件の適合性
強度・慣性・耐環境性のバランス
取り付け方式(クランプ式推奨)と芯出しのしやすさ
共振・危険速度との関係
系全体の振動特性も視野に入れる
これらを押さえて選定すれば、
高速回転軸でも安定・高精度・長寿命な駆動系を構築することができます。
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